平成29年3月8日
生殖補助医療技術教育カリキュラム標準化懇談会設立趣意書
我が国の生殖補助医療は目覚ましい発展を遂げ、現在では新生児21名に一人が生殖補助医療によって生まれるに至っている。その中で、医師が採卵した卵母細胞に体外受精や顕微授精を施し、得た受精卵を移植可能な胚盤胞にまで体外発生させたり、凍結保存したりする処置を担当する生殖補助医療技術者の役割は益々重要になっており、高い技術力と知識、経験などが求められている。
生殖補助医療技術者は、現在、保健学系や応用動物科学系の大学や専門学校を修了した者が各医療機関でその技術や知識を習得後にその仕事に従事しており、日本卵子学会などによる資格制度や、学会ならびに医療機関の主催する種々のリカレント教育等により、その質の保証とレベルの向上が図られている。
しかしながら、生殖補助医療技術者を輩出している大学などの高等教育機関では、僅かの大学・大学院で専用のカリキュラムが準備されているものの、他の多くの機関では特別なカリキュラムは準備されておらず、カリキュラムを有している大学についても個々に独自のカリキュラムを実施しているのが現状であり、生殖補助医療技術者を目指して就職する学生がどれだけの技術や知識を有しているのかについて、高等教育機関として必要最低限の品質保証が示せていないのが現状である。
そこで、賛同する高等教育機関がコンソーシアムを形成し、生殖補助医療技術者を養成するためのカリキュラムの標準化(最低限習得すべき技術および知識の内容と到達基準レベルの設定)とその普及を目指すことで、生殖補助医療技術者となるべく生殖補助医療機関に就職する学生への教育レベルを高等教育機関で保証し、もって生殖補助医療技術者養成のための医療機関の負担を軽減するとともに、我が国の生殖補助医療技術の質の底上げにより、我が国の生殖補助医療に資することを目的として、生殖補助医療技術教育カリキュラム標準化懇談会を立ち上げる。
また、生殖補助医療技術者になる者の中には、大学以外の教育機関出身者もいることから、本懇談会は、生殖補助医療技術者の再教育・リカレント教育のカリキュラムの標準化についても検討することで、生殖補助医療技術者の質の向上に資する。
(岡山大学生殖補助医療技術教育研究センター 舟橋弘晃)